避妊・去勢
- 猫の発情・妊娠のメカニズム
- 避妊・去勢手術についてじっくり考える
- 避妊手術のメリット・デメリット
- 去勢手術のメリット・デメリット
発情・交尾・妊娠・出産は、猫や人などのほ乳類が子孫を残すための「生命のシステム」です。
メスが性的に成熟して繁殖能力を持ち、後尾を容認するようになる状態を発情といいます。雌猫の最初の発情は生後6~12ヶ月の間に訪れ、1年に3~4回やってきます。しかし、猫の発情は日照り時間や気温とも関係するので、いつも同じような環境にある室内飼育の場合は、発情周期がさらに早まることもあります。発情期間は通常1~2週間で、犬のように出血したりしません。発情したメスは、床や人に体をこすりつけてくねくねしたり、腰を上げるようなポーズをしたり、人間の赤ちゃんのような大きな鳴き声を上げるのが特徴です。メスは後尾の刺激により排卵するので、発情期間に交尾を行い受精が成立すると妊娠し、65日程度の妊娠期間を経て出産します。
オスには決まった発情期はなく、基本的に成猫になると、発情期のメスと出会えばオスも発情し、いつでも交尾可能です。発情したメスに刺激されて大きな声で鳴いたり、たったままの姿勢で強烈なにおいのするおしっこを後ろにとばすスプレー行為(尿マーキング)を行ったりします。
避妊・去勢手術をするかしないかは、多くの飼い主が一度は直面する問題。中には、「自然のままに任せるのが一番」「健康な体にメスを入れるのはかわいそう」「オスだから子供も生まれないし関係ない」と手術に抵抗を持つ人もいます。しかし、人と一緒に暮らしている猫では、自由に異性と出会うこともままならず、すでに「自然のまま」の環境で生活していくことはできません。
かつて、猫が家の外へ自由に外出していた頃は、避妊・去勢手術は、望まない妊娠を防ぎ不幸な子猫や野良猫を増やさないということが主目的でした。しかし、手術のメリットはそれだけではなく、性ホルモンに関係する病気や遺伝的病気の予防、性的なストレスの軽減、問題行動の予防や改善などの効果もあります。
将来的にも繁殖をする予定がなければ、愛猫の健康のためにも、避妊・去勢手術を一考されてみてはいかがでしょうか?家族の一員である愛猫をどのように育てて暮らしていくかをふまえた上で、飼い主が慎重に検討し、最善と思う結論を選択して下さい。
避妊手術は一般的にメスの左右の卵巣と子宮を摘出するものと、卵巣だけを摘出する手術の2通りの方法があります。手術は全身麻酔で行うので痛みは全くなく、入院期間も動物病院によって異なりますが、1~2日が多いようです。
避妊手術のメリットは、至急蓄膿症や卵巣腫瘍、乳腺腫瘍など、性ホルモンの働きによって起こる病気の発症率が低くなることがあげられます。また、オスを求めて大声で鳴いたり、外に出たがったりすることも少なくなり、精神的にも落ち着きが見られます。
避妊手術のデメリットとして、肥満になりやすいことがよくあげられます。しかし、これは発情野性的なストレスから解放され、異性を求めるために費やすエネルギーが不要となるため、消費カロリーが少なくなっているにもかかわらず、以前と同じ食事内容を与えるためにカロリーオーバーになることが最大の原因。食事と運動の量を正しくコントロールすることで、肥満は避けられます。
手術のタイミングは、一般的には最初の発情が来る前の生後4~6ヶ月くらいが適当といわれていますが、もちろん、それ以降でも手術は可能です。若い頃に手術をした方が、至急や乳腺の病気にかかる率が低くなるともいわれています。手術方法や時期については動物病院でよく相談しましょう。
去勢手術は左右の睾丸の摘出が一般的な方法です。全身麻酔で行うので痛みはなく、傷口も小さくてすむので、その日のうちに退院できる場合も多いようです。
去勢手術のメリットは、去勢することによって雄性ホルモンがなくなるため、生殖器に関わる病気の発症がすくなることや、メスを奪い合うためのけんか、メスを求めての放浪がなくなり、精神的に落ち着くことなどがあります。また、強烈なにおいで多くの雄の飼い主を悩ます、室内でのスプレー行為など、人と一緒に暮らしていく上での問題行動ととらえあれる困った行動を押さえることにも効果があり、室内で飼いやすくなります。
デメリットとされる去勢手術後の肥満についても、避妊手術の場合と同様、食事と運動でコントロールすることが可能です。
手術のタイミングは、動物病院でよく相談して下さい